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王国の暁闇


<3>



 別の生き物のように脈動を繰り返していた太い楔が、ずるりと唇から抜ける。 

 喉笛を突き破られるのではないかという恐怖と、口の中に叩きつけられた生臭い雄臭。

 床に崩れ落ちたリュシアは激しく咳き込み、マファールの全てを吐き出していた。

 胃の奥からせり上がって来る不快感に何度も嘔吐(えず)きそうになったが、見下ろしてくる異母兄の冷酷な視線に気づく。

 肉体の欲求を無理に封じると、反発するように双眸から涙が溢れ出した。

「無礼者め……私の精を吐き出す者など、そなた以外は誰もおらぬぞ」

 淫猥に紅く色づいた唇にこびりついた己の白い残滓を、マファールは穢れを拭うように指を這わせる。

 リュシアの蒼瞳に恐怖と不安が浮かんでいるのを認めたマファールは、王太子の子種を欲する者は多いのだと言外に匂わせ、満足したように薄っすらと嗤う。

 激しい屈辱に打ちのめされていたリュシアは、意志の力を死にもの狂いで集め、顎にかかったマファールの手を弱々しく振り払った。

「……お戯れならば……もう気は済んだでしょう――どうぞ……王宮にお戻りください」

 呼吸を落ち着かせながら、リュシアはやっとの思いでそう告げた。

――この凌辱に値するようないったい何を、己がマファールにしたというのか?

 理不尽な行為に激しい憤りを覚え、リュシアはきつく王太子を睨みつける。

 二人の視線がぶつかり合うと、マファールは軽く片眉を吊り上げ、不愉快そうに鼻を鳴らした。

「その目だ――その目が私を苛立たせ、恐れさせる」

 独白するような低音で呟いたマファールは、媚薬に侵されて本来の力を失っているリュシアの躰を両腕で抱き上げた。

 マファールの翡翠色の瞳が狂気をはらむ。

 全身が粟立つような感覚に襲われ、リュシアは何とか逃れようと暴れ始めた。

 何十人もの人が入れる広い浴槽の縁に立ったマファールは、力無くもがいているリュシアを唐突に放り出す。

「――あっ!」

 我に返った時には、リュシアの躰は宙に浮き、湯船の中に落下する。

 大きな水しぶきを上げて浴槽の底まで沈んだリュシアは、恐慌状態に陥りながら、水面に出ようと手足を動かした。

 空気を求める細い喉を、浴槽に入ってきたマファールが両手で強く締め上げ、リュシアは再び水中に引きずり込まれていた。

 マファールの全身から放たれる紛れもない殺気に、リュシアは死を予感した。

 大蛇が小鳥の息の根を止めるように、どれほど抵抗しても、喉に絡みついたマファールの手は離れない。

(――誰か、助けて!)

 窒息する苦しみに意識が遠のき、目の前が白く霞んでゆく。

 いつも優しく接してくれていた異母兄が、何ゆえ己を憎悪するのか理解できないまま、リュシアは意識を手放そうとした。

 ところが、まさにその瞬間、リュシアは湯船の中から急に引き上げられていた。

 どんな気まぐれに支配されているのか、水中からリュシア抱き上げたマファールは、浴槽の外縁にリュシアを横たわらせる。

 そして、空気と水を一緒に吸い込んで咳き込むリュシアの背中を、彼は優しくあやすように撫で始めた。

「逆らうことは許さぬぞ、リュシア。
 なおも逆らうなら、仕置きをして、思い知らせてやらねばな」

 何の咎も感じていない口調で、くつくつと残忍に笑うマファールを、リュシアはただなす術もなく見上げることしかできなかった。

 涙で霞む視界に映るマファールは、あたかも魔物に憑りつかれたか、違う魂と入れ替わったようにしか見えない。

 そんなリュシアの気持ちなど斟酌することなく、マファールはさらなる恥辱を強いてきた。

 度重なる衝撃で全く動けなくなったリュシアを仰向けにしたマファールは、細い両足首をつかんで水辺へと引き寄せた。

 肩口に大腿を押し付け、下肢が大きく開かれる。

 両性を有するリュシアの秘園が全て暴かれ、マファールの視線の下にさらされる。

「……ッ! いやだ……見るな……ッ!!」

 思わず、リュシアは悲鳴を上げた。

 これほど凄まじい体勢で己の秘密を観察される事は、矜持と尊厳を全て踏みにじられるほどの汚辱でしかない。

 湯船の中のマファールはくすくすと笑いながら、彼が切り裂いたばかりの処女の花弁に、そっと指先で触れた。

「今さら何を恥ずかしがる――そなたはここで、私を受け入れたのだ。
 ああ……可愛そうに……血が出ているな」

 リュシアの神秘を全て見極めようとするように、マファールはその構造を丹念に指先でなぞる。

 彼の指先は花芯にゆっくりと沈み、内部に溜まっている蜜液をかき出そうと動き始めた。

「……アッ! やめ……やめて……いやあぁ…ッ!」

 異母兄の雄根によって散々えぐられ、熱く疼いている秘花に触れられるのは、リュシアにとって拷問にも似た痛苦だった。

 湯船に腰から下を漬からせたまま、マファールはリュシアの上で顔を伏せ、恐怖と痛みに震える花茎に口づける。

 先端を優しく吸われ、舌でちろちろと刺激されると、悲鳴を上げていたリュシアの喉が甘く震えた。

「ここがよほど悦いのだな、そなたは――中からまた蜜が溢れてきたぞ」

 指先と舌を使ってリュシアを啼かせながら、マファールは楽しげに笑った。

「あっ、あっ、あああっ……!」

 リュシアの背が弓なりに反り返り、開かれた足に力が入って小刻みに痙攣する。

 あまりにもあっけなく絶頂を極めさせられた瞬間、リュシアの唇からすすり泣くような美しい声が流れた。

 大きく胸を喘がせながら呼吸を繰り返しているリュシアを見下ろしたマファールは、唇に落ちてきた少量の甘い樹液を味わいながら飲み下した。

「さて――気持ちよくなったところで、私の相手を務めてもらおうか」

 肩で息をしているリュシアの腰をさらに引き寄せ、マファールはもう一度己自身をあてがった。

 征服されたばかりの花唇は、マファールの楔をほとんど抵抗なく含み、最奥へと優しく迎え入れようとする。

「――アアアッ! もう……やめてッ!」

 過敏になりすぎた花襞を、再びマファールの剛直が攻め立て始める。

 大きく張り出した先端が、内部を淫らにかき回す。

 唐突に、先ほどとは異なる不可解な熱が、リュシアの胎内に生まれた。

 やがて、肉槍をリュシアに収めたまま、マファールは細くくびれた腰を抱きかかえると、そのまま浴槽の中で深く交わり始めた。

「あううっ……あっ、ああっ……苦しい――」

 マファールの膝の上で向かい合わせに座らせられたリュシアは、真下から強く突き上げられた瞬間、思わず異母兄の首根にしがみついていた。

 余裕のある残酷な突き上げで翻弄していたマファールは、不意に動きを止めると、目の前にあるリュシアの首筋に唇を寄せる。

 濡れた髪から滴る水滴が仰け反った喉元を伝い、胸元へと流れ落ちる。

 リュシアから生まれる甘い蜜のようだとふと思い、マファールは透明な水滴を口に含み、そのまま柔らかな肌を吸い上げた。

 白い肌の上に紅の印が刻まれ、鮮やかな赤い花びらのように散りばめられてゆく。

 自らが施す所有の烙印に満足し、マファールは重い律動を再開させた。

 水の浮力と、肉体の重力が絶妙な刺激を生み出し、マファールの情動を高まらせてゆく。

 リュシアの唇からこぼれる声からも苦痛の音は消え、違和感に戸惑うような小さな喘ぎがあふれ出していた。

「……あ、ああっ……どうして……どうして……兄上は……こんな――?」

 温かい湯の中でゆったりと揺さぶられていたリュシアは、眦に涙を滲ませながら、マファールの首にしがみついていた。

 耳を打つ悲しげな問いかけに、マファールは異母弟を抱いたまま答えた。

「さて、どうしてであろうな――だが、私はずっとこうやってリュシアを抱きたかった」

 マファールの言葉にリュシアは一瞬息を止め、熱くくぐもった吐息を吐いた。

「……私たちは……兄弟なのに――」

「王家の中で兄妹で結婚し、交わった者は多い。
 アゼリスもマディヤルも、王族同士の婚姻にこだわっているのだ。
 彼らの穢れた血が私たちの中にも流れているのだから、仕方があるまい?」

 ひそやかに嗤ったマファールは、それ以上の会話は無用だと言うように、リュシアの体を強く引き寄せた。

 金色のうなじを片手で引き寄せ、薄く開かれたリュシアの唇に口づけを重ねたマファールは、むさぼるように接吻を繰り返す。

 逃れるようにリュシアが小さくかぶりを振ると、マファールは罰を与えるように軽く下唇を噛んだ。

 マファールの両手がリュシアの臀部を支え、形の良い双丘を割るように揉み始める。

 指先が双丘の狭間に息づく慎ましやかな後蕾に侵入した時、リュシアは仰け反って叫んだ。

「――あうっ! あっ、いやっ……そんなところ……触らないで!」

 指が硬い蕾をほぐすように出入りし、そのたびに浴槽の湯が流れ込む。

 その異常な感触に慄き、リュシアは逃れようと身を捩った。