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王国の暁闇


<4>



「あうぅっ! いや、いやあっ……そこは、いやあっ!」

 逃すまいとするように、マファールがリュシアの内部を深く抉り、敏感なその一点を捏ねるように体を揺する。

 その途端、足先から頭頂までを痺れるような快感が突きぬけ、リュシアは濡れた声を上げて涙を溢れさせた。

「嫌と言うわりには、私を締め付けてくるぞ、リュシア
 ――ここか? ここが悦いのだろう?」

 マファールは嗤い、執拗にその部分を小刻みに突き上げる。

 異母兄の背中に爪を立て、リュシアは背筋を反り返らせた。

「ひいいぅ…ッ……あ、あっ、ああっ……」

 マファールにしがみつきながらすすり泣いていたリュシアは、後孔に入り込んだ指先が薄い粘膜越しに前方を刺激した瞬間、絶息するような声を上げて身を痙攣させた。

「うっ……」

 奥歯を食い縛ったマファールは、リュシアの腰を押さえ込んで己自身を深々と突き立て、繰り返し訪れる快楽の証を注ぎ込む。

 他の誰と交わっても、これほどの悦楽は得られまい。

 そう感じながら、リュシアの肉体の虜になってゆく自分を嘲笑い、マファールはゆっくりと身を引いた。

「――さて、先ほどの仕置きをせねばなるまいな」

 抵抗することもできないリュシアを湯船から抱き上げ、マファールは淡紅に染まる美しい体をひんやりと冷たい大理石の床に下ろした。

 蛇紋を描く濃緑の床に寝そべったリュシアは、例えようもないほど美しく、ひどく妖艶に見える。

 波打つ朱金の髪が床に散り、白い両腕を投げ出した様は、情交を終えた愛欲の女神のような哀婉さえ漂っている。

 マファールは一度リュシアから離れると、入浴後に使用する香油と小さな足台を携えてその場に戻った。

 瞼を閉ざし、はあはあと荒い呼吸を繰り返していたリュシアは、マファールの手が肩にかかっても、もはや身動きできない。

 だが、体をうつぶせにさせられ、下腹部に足台を入れられた時、リュシアは初めてその卑猥極まりない体勢に気づいた。

 もがこうとしても、湯あたりを起こしたように火照った肉体は、リュシアの思い通りには動かない。

 両足の間に体を割り込ませてマファールが腰を下ろすと、リュシアは己の膝を閉じることすらできなくなった。

 香油瓶を傍に置いたマファールは、両手をリュシアの臀部に添えると、そのまま指先に力を入れて後蕾を露わにさせた。

 戯れに刺激を受けていた秘蕾は、すでに硬く閉ざされており、マファールを拒んでいるように見える。

「ここでも……私の精を飲んでもらおうか。口で飲めなかった罰として」

 媚薬を含んだ香油を指に絡めたマファールは、低く笑いながらそう宣告し、内襞をほぐすように後蕾に指を突き入れた。

「……あ、あうぅ……いや……もう、いや――」

 香油のぬめりによって痛みは感じなかったものの、体内をくすぐる異物感に苛まれたリュシアは、いやいやと何度も髪を振り乱す。

 しかしマファールは己の指を受け入れる部分に見入ったまま、無言で淫猥な愛撫を繰り返していた。

 指が引きつれ出すと、マファールは新たな香油を秘蕾に注ぎ込み、ぐちゅぐちゅと掻き乱す。

 媚薬が血流に浸透すると、リュシアはざわめくような官能に引きずられ、快楽を求めるように自ら腰を波打たせ始めた。

「ああ……あ、ああ……いけない……こんな……あううぅ……」

 リュシアの美貌が恍惚と輝き、口の端から甘い吐息と透明な雫が流れ出す。

 快感の漣が脊柱を走るたびに、リュシアは両腕を突っ張って仰け反り、艶めかしく喘いだ。

「そなたはやはり淫乱だな……ここで、これほど感じるとは」

 貶めるように言いながらも、マファールの翡翠色の瞳は興奮してぎらぎらと輝き、背徳の愉悦に身悶えるリュシアを見つめていた。

「……ああ……兄上……兄上……赦して……もう……赦して――」

 ぞくぞくと総身に広がる淫靡な感覚に慄き、リュシアはすすり泣きながら哀願する。

 ようやく屈服した獲物に満足しながらも、マファールは己の欲望に従い、行為を中断することはなかった。

「私はそなたの全てを奪う。私を憎め、リュシア」

 二本の指が難なく飲み込まれるようになると、マファールは両手指を使って秘蕾を大きく割り広げ、その部分に舌をもぐりこませる。

「ひああぁっ……あ、ああっ、いやあっ!
 やめて……やめてください……兄上!」

 マファールの舌先が内奥の媚肉を舐め上げるたびに、リュシアは甲高い声を上げた。

 苦痛よりも、堕落してゆく快楽の方が遥かに恐ろしい。

 リュシアの花茎は充血して勃ち上がり、前方の花芯からは愛蜜がとめどなく溢れ出す。

 腰骨の奥に情欲の炎が燃え盛り、全身を焼き尽くすかのよう熱が高まっていった。

 そして――香油とマファールの唾液によって蕩けた後蕾に、灼熱の楔が押し当てられ、ゆっくりと内部へと押し入ってくる。

 女花を蹂躙された時よりも酷い激痛に苛まれ、リュシアは浴場全体に反響するような絶叫を放った。

「アアァーッ! ひいいっ…ひっ、ひいっ……ああっ……」

 一気に貫くほど残酷ではなかったが、マファールは後腔をゆっくりと押し広げながら、猛々しい肉杭を根元まで納めてゆく。

 リュシアは体を硬直させて仰け反り、大きく蒼瞳を見開いたまま、湯気に煙る美しい天井を凝視していた。

 拒絶して硬くなった肉体をなだめるように、マファールは健気に勃ちあがったままの花茎を優しく愛撫する。

 リュシアの唇からため息にも似た声が上がり、突っ張っていた両手がぶるぶると震え始めた。

「はっ……あ、ああっ……いや……もう、いや――」

「嘘をつくな……後ろの方までおまえの蜜が流れてきている。
 ここに挿れられるのが、そんなに好きか? 前よりも感じているではないか」

 マファールの言葉に、リュシアは涙を溢れさせながら首を振った。

「違う……あ、ああっ……いや、動かないで……」

 己の形を覚えた秘蕾が柔らかくなじむと、マファールはリュシアを支えながら、ゆっくりと腰を律動させ始めた。

 媚薬に濡れた後腔は、マファールの牡を逃すまいとするように絡みつきながら、リュシアに鈍く痺れるような快感を与える。

 暴走する己を制するように時々動きを止めながら、マファールはリュシアの花茎と女花を手指で刺激して官能を高めさせ、さらに後蕾へ執拗な攻撃を仕掛けていった。

 リュシアの理性はいつしかもろく崩れ、マファールの愛技に溺れてゆく。

 リュシアの愛蜜と破門の鮮血が溶けて交わり、白い内股を伝いながら蛇紋の床にトロトロと滴り落ちてゆく。

「ああーっ、あ、ああっ……あ、熱い……体が……溶ける――」

 見開かれた蒼瞳から涙が伝い落ち、唇からも愛欲の音と雫とが溢れ出す。

 もはや一国の王子としての矜持は失われ、媚薬に犯された肉体は本能のままに動き出し、リュシアは春をひさぐ娼婦のように性の悦楽を自ら求めていた。

「リュシア……リュシア……そなたの身を穢した私を、憎み続けるのだ。
 そなたの心が、私への憎悪で染め変わるよう、婚礼の祝いを贈ろうぞ。
 私を憎み、私の命を奪うがいい――さもなくば、私はそなたを、永劫に隷縛する」

 理性の限界に達したマファールは、汗にまみれたリュシアの首筋に接吻を落とすと、獣のように激しく腰を打ちつけはじめた。

「あ、あっ、あっ……はっ、ああっ……」

 リュシアの声が、短く、切羽詰った悲鳴へと変わる。

 互いが繋がりあった場所が炎のように熱くなり、そこから全身を焼き尽くすような凄絶な快感が生じた。

「ああぁーッ、あ、ああっ!」

「くっ……リュシア……ッ」

 細い腰を強く抱き寄せたマファールは、華奢な背に覆い被さるようにして、リュシアの秘肛に熱い濁流を放った。

 比類なき快感に、マファールは眩暈を起こしそうになる。

 滾る血潮が逆流し、燃え立つかのように、躰が灼熱を帯びてゆく。

 激しい情交の末、ついに意識を失ってしまったリュシアを、マファールは抱きしめたまましばらく動かなかった。

 翡翠の瞳に暗い影が過ぎり、マファールはリュシアの唇にそっと口付けを降らせる。

「リュシア……そなたは…私の物だ――」

 闇の情念に侵され、支配されようとしている事を感じながらも、マファールはその事に甘美な愉悦を覚え、暗い陶酔に身をゆだねる。

 マファールの想いを知りながら、父王はリュシアを遠ざけようとした。

 リュシアが傍からいなくなれば、マファールの狂恋が醒めるとでも思っていたのか──。

 だが、たとえ婚礼前にリュシアの純潔が奪われたと知っても、父王は予定通り素知らぬ顔でマディヤルに嫁がせるだろう。

 父は、そういう男だ。

 本来ならば不可侵の神巫であったリュシアを、マディヤル王の望むがままに還俗させ、誕生時の婚約そのまま、かの王に嫁がせようというのだから。

 触れてはならぬ存在ならば、諦めもするが、他の男に奪われることだけは許さない。

 アゼリスの玉座を血に染めた後で、必ずリュシアを我が手に取り戻す。

 滅びてしまえばいいのだ、アゼリスも、マディヤルも──。

 二つに分かれた王統は、竜神イシュヴァに砕かれた神世の月のように、やがて消え去るだろう。

 リュシアの躰から離れたマファールは、満ちゆく月の魔力を感じながら、狂える哄笑を放った。

 マファールの全身が軋み、筋肉が隆起し、骨格が人ならざものへと変化してゆく。

 小さく呻いて意識を取り戻し、のろのろと顔を上げたリュシアは、恐るべき変貌を遂げつつある異母兄を見上げ、愕然を双瞳を見開いた。

 硬質な輝きを帯びた剛鱗がマファールの全身を覆い、顔は獅子のごとく長く伸び、たてがみをなびかせる。

 長い竜の尾が床に這い、大理石を踏みしめる両脚には鋭く湾曲した鉤爪が──。

「あ、兄上……あなたは──!?」

 変身したマファールの異形を目の当たりにして、リュシアは恐怖に青ざめた。

 ずらりと並んだ鋭い牙を剥き出しにして嗤ったマファールは、身動きできずにいるリュシアの前で片膝をつき、鉤爪の背で蒼白の頬を撫で上げる。

「この姿のまま犯してやってもいいが……その前に、やるべき事があるのでな。
 そなたはマディヤルの王妃となれ、リュシア。
 かの国で知るがいい──《イシュヴァの化身》と崇められるものの正体を。
 そして、狂えるこの私を屠(ほふ)る者となるがいい。
 さもなくば、私は、アゼリスもマディヤルも血の海に沈め、最後にそなたを捕える

 リュシアは立ち上がることもできず、闇の中に姿をくらませようとするマファールに、悲鳴のような声で呼びかけた。

「お待ちください、兄上──あなたは……何を……ッ!」



 その夜を境に、王太子マファールは忽然と消え失せ、マディヤルへと旅立つリュシアの胸を騒がせた。

 やがて、マディヤル王に嫁ぎ、王妃となったリュシアのもとに、アゼリス国王が惨殺されたとの一報がもたらされる。

 玉座は血に染まり、斬首された王の頭が飾られていたと。

 アゼリス王を弑逆したのは、失踪した王太子マファールであったと──。