Rosariel.com
Fatal Doll



<36>



 だが、唾液を塗され、ちゅくちゅくと吸われ続ける雄芽からは、肉体を悩乱させる快感が溢れ始めていた。

 両手足の鎖を軋ませ、幾度となく身をよじっても、その淫らな感覚にふっと心を奪われる瞬間が生まれている。

「──う、ううぅッ……くうぅ──うぁッ…あ、あ……はッ!」

 秘芯が淫らな熱を孕んでゆくことに狼狽えながら、零は唇を噛みしめていたが、その一点を掻き乱された瞬間、思わず首を仰け反らせていた。

「……ここが悦いのか? 感じているんだろう?
 中がぐちゃぐちゃになって、指が溶けてしまいそうだ」

 零の反応に満足したのか、ファントムはクククと嘲笑いながら、中指に人差し指を添えて花唇をまさぐり始めた。

 わざとなのか、卑猥な水音を大きく響かせるように指を動かす。

 零はその言葉を否定するように頭を振り乱し、両の拳をきつく握りしめた。

(──……意識したら、だめだ……気を…散らさなきゃ……)

 肉体の感覚から気を逸らし、ここから──ファントムから逃れる方法を、零は集中して考えようとした。

 たとえ逃れられなくとも、このおぞましい陵辱に心を囚われなければ、それでいい。

 だが、ファントムは零の考えを見透かすように笑い、秘唇の奥に沈めた二本の指をさらに妖しく蠢かせた。

「我慢しないで、声を上げればいい。
 ここを鷲塚に擦られて、毎晩よがっていたんだろう?
 お前はこうされれば、誰にでも足を開く淫売だ。
 気持ち悦くなれるなら、相手が鷲塚じゃなくとも良かったんだ」

「──ち、違う…ッ!」

 その嘲りを聞き流すことはできず、零は思わず声を荒らげ、ファントムを睨み付けていた。

 するとファントムは唇を歪ませてにたりと笑い、濡れた花弁から引き抜いた二本の指を、零の視線の先に翳した。

 赤黒く爛れた指先に、蜜液が絡みつき、ねっとりと塗れ光っている。

「……くっ」

 凄まじい羞恥に全身を灼かれ、零はきつく両目を閉ざして、顔を背けた。

 浅ましい反応を示す己の肉体に腹が立ち、どうしようもなく呪わしく感じた。

 だが、零の背後に立ったファントムが、再びクリップに挟まれた乳首を弄び始めると、すぐに疼痛で何も考えられなくなり、声を漏らさないよう耐えることしかできなくなった。

「──ここも、感じるんだろう?」

 小刻みに震える零の肉体を背後からまさぐっていたファントムは、不意に両手で双臀をつかむと、そのまま床に膝を突き、秘められた後孔に舌先を伸ばした。

 ぬらぬらとした舌が中心を舐め回し、急に硬く尖って、中へ中へともぐり込んでくる。

「……ひ…うッ……ううぅッ……」

 ざっと全身が粟立ち、大きく仰け反った零は、忌まわしい感触から逃れようと腰を左右によじらせた。

 だがファントムはがっしりと零の尻を掴んだまま顔を押しつけ、尖らせた舌で後蕾をこじ開けると、ゆっくりと抜き差しをし始める。

「……いっ…いやあッ! あ、ああっ……やめて……」

 我を忘れて腰を振り立てるたびに、チリンチリンと胸元で鈴の音が鳴り、ジクジクと乳首が熱く疼いた。

 侵入を拒もうと後肛をつぼませていても、執拗に舌で溶かされ、さらには充血している前方の珠芽を片手でしごかれると、妖しく爛れた快感に呑み込まれそうになる。

「──あ、ああぁ…ッ……いや…いやッ……こんな……ッ!」

 無理やり引きだされた快感の渦に巻き込まれ、膝がガクガクと震え出す。

 亜麻色の髪を振り乱し、悲鳴を振り絞った零は、ついに腰の奥で爆ぜた強烈な刺激に耐えられなくなり、全身をぴんと緊張させた。

 一気に焼き尽くされ、半狂乱のまま絶頂に昇りつめる。

「……あ、あっ……あっ……ああっ……」

 そのまま意識を手放しそうになっていた零は、涙に濡れた双瞳で虚空を見つめ、途切れ途切れに息を喘がせた。

「尻の穴を舐められて悦ぶ堕落した天使には、きつい罰が必要だ」

 くつくつと喜悦の笑いを響かせ、ファントムはそう呟いた。

 銀色のワゴンに近づいたファントムは、陳列された物の中から茶色の薬用瓶を取り上げると、湯を溜めた洗面器にドロリとした薬液を注ぎ込み始めた。

 そして、長大なガラス製の注射器にその液体を充填し、三つの球体が連なった形の銀色のプラグとゴム管を連結させる。

 ファントムは、ぐったりしている零の傍にワゴンを押して戻ると、もう一度白い双丘を撫で回し始めた。

「……いや……もう…いや……やめて……」

 おぞましい陵辱の中で感を極めた己自身に絶望しながら、零はゆらゆらとかぶりを振ったが、ひんやりとした金属が後蕾に押しつけられた途端、はっと双眸を瞠った。

 ふっくらとほぐされた秘肛に異物がずぶりと押し込まれ、金属のくびれた部分がぴたりと嵌りこむ。

 ファントムは、尻尾のように垂れ下がったゴム管を一度、二度と引っ張り、抜けないことを確認してから、ガラスの注射器を結合させた。

 生温かくドロリとした液体が注ぎ込まれた瞬間、零は絶叫を放ち、背中を反り返らせた。

「──ヒイ…ッ! ひっ…いや…ッ……いやあ…ッ!」

 ドロドロと流れ込んでくるおぞましい感触に蒼白になった零は、死にもの狂いで逃れようと悶え、激しく身をくねらせた。

 後蕾から伸びたゴム管は、その動きに合わせて揺れていたが、抜け落ちることはない。

 妖しく淫猥な舞踏を背後から眺めながら、ファントムは掠れた声を上げて笑い、残酷な責め苦を与え続けた。

「そんなに腰を振って、浣腸が気に入ったのか?
 まだまだ入る──たっぷり500ccほど飲ませてやるから、じっくり味わうんだ」

 断続的に注射器を押し込みながら、ファントムは内側から膨らんでいるように見える後蕾を指先で突っつき、零の耳元で嘲笑った。

「……ひっ…ひっ…ううぅ……も、もう……許して──」

 急速に膨れ上がってくる圧迫感に呻きながら、零はついに哀願し、全身を震わせた。

 汚辱の泥沼に引きずりこまれ、もし耐えきれなくなったなら、死ぬよりも恥ずかしい思いを感じることになるだろう。

 ところがファントムは、全ての液体を注入し終えると、嘲るように宣告した。

「さあ……しっかり尻の穴を締めていないと、ここで漏らしてしまうぞ」

 そう言いながら、嬲るようにゴム管を弄び、ヒクヒクと蠢く後蕾を刺激する。

「……い、イヤッ──ひああ…ッ!」

 銀のプラグが引き抜かれた瞬間、零は全身を限界まで硬直させ、荒々しい排泄感に死にもの狂いで抗った。

 激しい苦悶に汗が吹き出し、零の白い総身がぬらぬらと輝く。

 内部から押し寄せる苦痛に囚われ、もはや抵抗することもできなくなった零の両手足から、ファントムはゆっくりと枷を外していった。

 タイル張りの床に横倒れになった零は、下腹を駆け巡るおぞましい痛みに悶えながら、掠れた呻き声を絞り出した。

「……う、ううっ……も、もう……苦しい……お願い……ッ」

 息を詰まらせながら訴える零の前に立ったファントムは、ズボンのジッパーを下ろすと、中から己のペニスを探り出した。

「トイレに行きたいなら、これをしゃぶってからだ」

 生理的な切迫感に突き動かされ、のろのろと顔を上げた零は、それを目の当たりにして愕然とした。

 ファントムの男根は異形だった。

 あるべきはずの先端が、まるで切り落とされたかのように消失しており、残りの部分は醜く肥大し、ぼこぼこと瘤状の隆起で取り巻かれている。

 一瞬、苦痛も忘れて驚愕した零の顔に、ファントムはそれを突きつけた。

「こうなったのも、鷲塚のせいだ。
 これを見た女たちには嘲笑われ、忌み嫌われる。
 だからお前は、これに奉仕しなければならないんだ」

 激しい憎悪に彩られた声音でそう言い放ったファントムは、零の前髪を乱暴に掴み上げると、男根をその唇に押しつけようとした。

 思わず顔を背けていた零は、急激に襲ってきた腸の蠕動に呻き、涙を滲ませた。

 このまま拒否を続ければどうなるか──。

 凄まじい葛藤におののく零の頬に、ファントムはグロテスクなペニスを擦りつける。

 息を荒げていたファントムは、やがて待ちきれなくなったのか、行為を急かすように零の胸元のクリップを指先で圧迫した。

 ズキリと激しい痛みが乳首に走り、全身が強張る。

「──くっ…ああぁッ!」

 小さな突起を押し潰される激痛と恐怖に悲鳴を上げた零の口に、ファントムは強引に己自身を押し入れようとした。

「……うぐ…っ……ぐううぅッ……」

 唇を割って侵入してきた異形のペニスが舌に触れると、背筋が凍るような嫌悪感が湧き上がってきた。

 勃起しているのか、硬く膨れ上がったそれは、まるで別の生物でもあるかのようにピクピクと脈動し、口の中を無遠慮に犯そうとしている。

 だが、顔を引き、口を離そうとしても、後頭部を押さえているファントムの手がそれを許さない。

 さらにファントムは自ら腰を前後にうねらせ、思うがまま零の唇や舌の感触を楽しもうとしていた。

 内臓を掻きむしられるような苦悶と、口を犯される屈辱に苛まれ、零は眩暈を感じた。

 いっそ狂ってしまえば、楽になれるのだろうか──何も感じないように、心を手放してしまえば……。

 それはあまりにも甘美な誘惑だった。

 いつ終わるともしれない汚辱に抵抗し続けることなど、自分にはできないかもしれない。

 愛の無い行為にいつか心を奪われ、この忌まわしいファントム相手に浅ましく肉欲に耽るようになるくらいなら、いっそのこと──。

(ああ……でも……それじゃ……響子さんと同じだ……)

 狂気に取り憑かれた響子の笑顔と、冷徹な鷲塚の顔が脳裡で交錯する。

(……だめ……それじゃ、だめだ……海琉が……)

 だが、死ぬことも、狂うことも許されないのなら、どうすればいいのだろう。

 零の眦から涙がこぼれ落ちた時、突然、浴室の外で異変が起こった。

 ガタガタと激しい音を立てて外側のドアが開き、ダークスーツを身に纏った大柄な男が二人飛び込んでくる。

 とっさに零から離れたファントムが身構える間もなく、男たちはガラス戸を開けて中に侵入し、拳を固めてファントムを殴りつけた。

「ファントム……こんな風に好き勝手やって良いなんて、誰が言った?」

 そして──最後に響いたのは、聞き覚えのある若い男の声だった。

 しなやかな足取りで浴室に入ってきた翔太は、呆然と目を瞠っている零を見下ろし、優しい笑顔で微笑みかけた。