Rosariel.com
Fatal Doll



<45>



 ひんやりと冷たいジェルが胸元に垂らされた瞬間、自分の肉体に意識を引き戻され、零はびくりと身をすくませていた。

「零さんの乳首……ちっちゃくて可愛いね」

 翔太の細い指先が、ジェルを塗り込めていくように、突起の上でくるくると回る。

 反対側も同じようにされ、零は呻きながら頭を振った。

 だが、ジェルが垂らされた部分がじわじわと熱くなっていき、やがて神経に電流が走り続けるようなピリピリとした感覚に襲われた。

 固く凝った乳首を指先で摘まれ、戯れに引っ掻かれると、零の喉は反り返った。

「──んうぅぅッ…ぅくっ……ぐううぅッ!」

 その様を見つめ、翔太がくすくすと笑う。

「……そろそろ、悦くなってきたんじゃない?」

 軽く撫で回されるだけで、胸の頂から全身に鋭い電流が走り抜ける。

 その異様な感覚に耐えきれず、零は翔太の指戯から逃れようと、椅子の上で上半身を揺らした。

「これ……付けてあげる。もっと気持ち悦くなれるよ」

 何も見えない闇の中で、翔太の声が響き、耳元でチリンと小さな鈴の音が響く。

 次の瞬間、過敏になっていた乳首をきつく引っ張られ、何か固い物体で挟み込まれた。

 ズキンと衝撃が走り、挟み込まれたその部分から灼けつくような刺激が駆け巡る。

「……ぅぐううっ! うぁ…ウウゥーッ!」

「ファントムが使ってたクリップだよ。ほら……反対側も」

 大きく仰け反った零は、ズキズキとした疼痛と危うい快感を生み出すクリップを外そうと、全身を大きく波打たせた。

 硬く尖った乳首が脈動するたびに、頭の中に赤い霧がかかってゆく。

 もはや、異形の肉体を見られているということなど、頭から吹き飛んでいた。

「凄いね。そんなに感じるんだ。じゃあ……ここに塗ったら、どうなるんだろうね?」

 フットレストを大きく左右に開き、その間に立った翔太は、ひんやりとしたジェルを、零の股間にたらたらと垂らした。

 アイマスクの下で目を剥いた零は、狭間へと流れ落ちてゆくジェルの感触におののき、唇を震わせた。

「零さんのここ……初めて見た時はびっくりしたけどね。
 でも、どうしてファントムが『天使』って呼ぶのか、それで納得したよ」

 情欲を感じさせない淡々とした声音で語りかけながら、翔太は細い指先を未熟なペニスへと伸ばした。

 すでに硬く充血していた包芽をゆるやかに扱かれると、零は拘束を引き千切らんばかりに躰を跳ねさせた。

 我を忘れて腰を振り立て、翔太の指から逃れようと躰をよじる。

 獣じみた浅ましい悲鳴が迸ったが、その鮮烈な快感は、零の精神をも追いつめた。

「……ぅぐっ…ぐううぅ…ッ! グ…ウウゥーッ!」 

 全身が炎に包まれたように熱くなり、心と乖離した肉体が、ガタガタと痙攣する。

 絶頂に追い上げられ、爆発する──ひときわ痛切な悲鳴を残して、零は崩れ落ちた。

「……ううぅ…ふあっ……うぁっ……」

 緊張が途切れ、ぐったりと弛緩した躰が、快感の余韻に反応してビクビクと震える。

 虚ろになってゆく頭の中で、零は、快感に耐えられなかった己自身に絶望した。

 眦から涙が溢れ出し、ボールギャグを噛まされた口からすすり泣きがこぼれる。

「我慢しなくていいよ、零さん。
 もう、こんなにビショビショになってるじゃないか」

 だが、翔太は責めの手を休めず、淫蜜を溢れさせる花芯に指を沈め、状態を思い知らせるようにぐちゃぐちゃと掻き乱した。

「……ううっ……くううっ……う、ううっ…んッ……」

 気を失いそうになりながら、いやいやと首を振った零は、肉体がなおも浅ましく揺れ動いてしまうことにショックを受けた。

(──ダメ……海琉……もう……耐えられない……)

 ジェルの中に媚薬が混ざっているのか、恐ろしいほど感覚が研ぎ澄まされてゆく。

 全ての刺激が、悪夢のような快感をもたらしてくるのだ。

 どれほど意思の力を振り絞って、その感覚に抗おうとしても、肉体は淫らに反応して打ち震えてしまう。

 翔太の指が蠢く感触に、零はいつしか腰をうねらせながらすすり泣いていた。

「零さんのエッチなここ、鷲塚サンの太いモノを、いつも咥え込んでたんでしょ?
 だったら……このくらい太くても平気かな?
 これ、イボ付きだから、気が狂うほど悦いかもよ」

 零の痴態を目の当たりにして興奮を抑えきれなくなったのか、翔太はわずかに息を弾ませながら、熱く蕩けた花弁の狭間に、硬い異物を押しつけた。

 身をすくめる間もなく、その尖端がゆっくりと侵入してくる。

 濡れた花芯を押し開く太い張り出し……引き裂かれるような圧迫感に、零が喉を仰け反らせた次の瞬間、異物がずるりと滑り込み、続いてゴツゴツとしたイボ状の突起が、過敏になっている粘膜を擦りあげた。

「──ぅううぅっ……ぅあっ…んんッ……ふっ…くううぅッ……」

 目が眩むような快感に突き上げられ、零は不自由な裸身を波打たせた。

 躰が揺れるたびに、胸に吊された鈴がチリチリと鳴り響き、治まることのない淫靡な電流が全身に走り抜ける。

 心が放つ悲鳴は、やがて肉体から溢れ出す嬌声に掻き消されていった。

 恐ろしい異物を零の内部に収めた翔太は、出来映えに満足したように「ふふっ」と含み笑いをもらした。

「いやらしい格好になったね、零さん。
 しばらく一人にしてあげるから、思う存分楽しんでよ」

 気が遠のきそうになっていた零は、その声に引き戻され、くぐもった呻き声を上げた。

 熱くたぎった秘裂が、自分自身とは別の意思を宿したようにヒクヒクと蠢き、おぞましい形の異物に絡みつく。

 ゆらゆらと頭を振りながら、ボールギャグを噛みしめて快感を拒もうとした零は、翔太の声がふつりと途切れ、何か別のものに集中している気配を感じた。

 しかし、翔太は深い嘆息をもらすと、すぐに零の肉体に触れてきた。

「──こっちも……だって。ごめんね、零さん」

 翔太は、ジェルを絡めた指を伸ばし、剥き出しになっている後肛にそっと触れた。

 ゆるゆると揉み込むようにジェルをなすりつけ、内部に指を押し込み始める。

「……ううぅッ! ふっ…ぐうっ……うううぅッ!」

 全身を大きくゆすり立て、その刺激から逃れようとしたが、手足の拘束は振り解けない。

 かえって自らを追いつめてしまい、零は弓なりに仰け反った。

 細い円球を繋げた異物が、ジェルのぬめりを帯びて後孔に侵入してくる。

 緊張して息を詰めていた翔太は、それでも残酷な仕打ちを止めることはなく、最後のボールまで非情に押し込んだ。

「……ぁぐううぅ……ッ!」

 前後を塞がれ、その激しい圧迫感に呻いた零は、低い電子音を立てて二つの異物が別々に動き出した刹那、喉から絶叫を迸らせた。

 全ての感覚が灼き切れるようなショックに襲われ、零の総身はガタガタと椅子の上で跳ね踊った。

 弓なりに反り返りながら、狂ったようにガクンガクンと腰が波打つ。

 いつの間にか翔太の気配が消えていることにも気づかず、零は無情に動き続ける二本のバイブレーターに犯され、悲鳴を上げ続けた。

(──……海琉……海琉……ッ!)

 どれほど求めても、今ここに、助けてくれる人はいない。

 狂ったようにチリチリと鳴り続ける鈴の音と、途絶えることのないバイブレーション、そして自分自身のあられもない叫び声……。

 幾度となく躰が突っ張り、絶頂の痙攣を引き起こす。

 過剰な快感は、苦痛としか感じられない──まして、そこに愛は無く、大切な人の温もりも無く……機械的な快感に操られるだけならば……。

 少しずつ、おぞましい快感から意識が離れ、虚ろになってゆく。

 暗く冷たい闇の中に吸い込まれるように、零は気を失った。




 そのまま目を覚まさないでいられたなら、幸せだったのかもしれない。

 だが、口を塞がれていたボールギャグが外され、涙を吸い込んだアイマスクが取り除かれると、瞼を通して光が差し込んできた。

 意識が揺り動かされた次の瞬間、後蕾に埋め込まれていたバイブレーターがずるりと引き抜かれる。

 熱をはらんだように疼く秘肛から、次々にボールが引きだされる刺激に、零は惑乱しながらかすれた喘ぎ声を立てていた。

「ひああっ……あうぅ……あっ……ああっ……」

 異常に昂ぶった快感は、まだ躰の中から消え去らない。

 瞼を開けた零は、息を荒らげたまま、虚ろな瞳を宙にさまよわせた。

 その視界の中に翔太が顔をのぞかせ、心配そうな声で話しかけてくる。

「──大丈夫、零さん? さすがにちょっと、キツかったよね」

 翔太は冷たく濡らしたタオルで、涙や汗で汚れた零の顔を拭いていった。

 その手つきは優しく、苛酷な責めを強いた同じ人物とは思えない。

 ジンジンと疼く胸元にタオルが触れた時、零はのろのろと小さくかぶりを振った。

「……いや……もう……嫌──何も……しないで……」

 切れ切れに息を喘がせ、弱々しい声で訴える零を見下ろし、翔太は躊躇するように手を止め、きつく眉をひそめた。

 その時、少し離れた場所で、パンパンと拍手をする乾いた音が響き渡った。

 翔太の他にも誰かがいる事にようやく気づき、セピアの瞳に怯えが浮かび上がる。

 ボールギャグとアイマスク、そして胸のクリップは外されていたが、両手足を縛る拘束は、いまだそのままだった。

「刺激的な、良い画を撮ることができた。
 君のお陰だ、鳴川零。
 君が何度もイッてしまうから、最後はコレが抜け落ちてしまったが……」

 大きく開かされた両脚の間に、黒々とした影が立った。

 残酷な嘲笑を含んだ、深く響く声──どこかで聞いた声だと思いながら、零は瞬きし、目線を足許に向けた。

 冷ややかに見下ろしている男の顔を、朦朧と見返す。

 男が手にしているのは、突起物が連なるペニスの形をした、おぞましいバイブレーター。

 あんな物で犯されていたのだと戦きながら、零は記憶を必死に手繰り寄せようとした。

(──……この人は……どこかで……)

 恐らく50歳前後の、堂々とした端整な顔立ち。

 深い謎を宿した双眸は、紳士然としたその外見を裏切り、厳しく冷酷だった。

 どこか鷲塚と似た雰囲気……全身から漂う危険な匂い──。

「どうした? よがり過ぎて、私の顔を忘れたか?」

 くくっと喉を震わせ、男は腕を伸ばし、呆然としている零の顎を掴んだ。

 近くに寄せられた男の顔を見つめた瞬間、零の脳裡に、ひとつの名前が閃いた。

「……み……御山……恭介……?」

 その名を口にした途端、男の双眸が暗い炎を宿したように光り、口許に冷たい微笑が浮かび上がった。

「よく思い出したな。褒めてやろうか」

 ゆったりとした深い声で囁いた御山は、わなわなと震え始めた零の唇を、そっと親指でなぞりあげた。