Rosariel.com
Fatal Doll



<6>



 ところが、突如として耳の穴に吹き込まれた囁きは、残酷な笑いと艶に彩られていた。

「そういえば……お前にもお仕置きが必要だったな」

 自らの身体と、ソファの背もたれの間に零を閉じ込めた鷲塚は、舌先で耳の形をなぞり、そのままどくどくと脈打つ首筋に唇を押しつけた。

 甘やかな陶酔に身を委ねていた零は、思わずぎくりとして瞼を開いた。

「だって……そんな……」

 罰せられるほど悪いことをしたとは思えない。

 とはいえ、鷲塚の叱責を恐れて、カッツェでの一件を隠そうとしていたのは事実で──。

 セピア色の瞳が落ち着き無く揺れる様を見つめながら、鷲塚は薄く唇をつり上げた。

「──当然だろう? 見え透いた嘘をつくからだ。
 どうせなら、俺を騙せるような嘘をつけ。
 そうでなければ、何の役にも立たん」

 鷲塚は零の顎をついと持ち上げると、ふっくらと赤らんでいる唇を親指でなぞった。

「行き当たりばったりでごまかそうとするから、すぐにばれるんだ。
 お前は思っていることがすぐに顔に出る。
 嘘を見破られたくなければ、表情を変えるな」

 冷徹な鋼色の瞳を見返していた零は、思い悩むようにきゅっと眉根を寄せ、小さくかぶりを振って見せた。

 鋭い洞察力を持つ鷲塚を騙しきることなど、自分にできるはずがない。

 判っていながら嘘をついたのは、あまりにも浅はかだったかもしれないが──。

「そんなの……無理だよ」

 気弱な言葉を呟いた零を見下ろし、鷲塚は呆れたようにふっと鼻で笑うと、ひらひらとしたパンツの裾をたくし上げ、掌をするりと滑り込ませた。

「だったら、二度と嘘はつかないことだ」

 もう一度唇を重ね合わせながら、鷲塚は太腿をそろりと撫で上げてゆく。

 ざわめくような刺激が背筋を這い上がり、たまらず零は息を喘がせていた。

 キスで昂ぶった肉体は、鷲塚の手がもたらす愛撫を強く意識して、ささいな動きにも反応を見せる。

 だが、先ほどと同じように、片足をソファの背に引っかけられ、膝を大きく開かされてしまうと、零は恥ずかしさのあまり目を開けていられなくなった。

 いやいやをするように頭を左右に振ると、鷲塚はくつくつと笑い、コーヒーを浴びた片足だけを付け根まで露わにした。

 そして、白い肌の上に唇を落とし、ねっとりと濡れた舌を這わせてゆく。

 傷をなめる獣のような行為に驚き、零ははっと息を飲んだ。

 鷲塚の長い指先は、さらに奥を目指して内股を撫で上げ、きわどいラインをたどっている。

「……い、いや……ッ」

 全身の血が熱くたぎるのを感じ、零は鷲塚を押しのけようと両腕を突っ張った。

「嘘をつくな──こうされて、さっきも感じていたくせに」

 鷲塚は冷然と断言すると、無防備に広げられた両足の狭間に指を押しつけ、やんわりと下着の上からなぞった。

「──や…ぁッ!」

 その感覚にすくみ上がり、零は思わず足を閉ざそうと身をよじった。

 だが鷲塚はそれを許さず、身動きできないように零を押さえ込んだまま、薄布で覆われた秘所を、上に下にと爪の先で弄ぶ。

「随分いやらしい眺めだな、零──じっとり濡れている上に、ここが勃起しているぞ」

 喉奥でくくっと低く笑った鷲塚は、快感を示して勃ち上がった零の珠芽を、その形を確かめるようになぞり上げた。

「……や…やめて……言わないで……」

 激しく羞恥を煽られ、瞼をきつく閉ざしていた零は、顔が紅潮するのを感じた。

 こんな風にあからさまな言葉で嬲られるのは、耐え難いほど恥ずかしい。

 だが、そんな思いを裏切るように、熱く蕩けた秘裂は、下着越しに感じる鷲塚の指を求めるように脈打ち、蜜を溢れさせていた。

 鷲塚は秘やかな笑い声を立てると、顔を伏せて零の弱みに口づけ、きつく吸い上げた。

「──ひぃっ…ああっ! ……いやぁ……そんな……ッ」

 充血して膨らんだ未熟なペニスを、薄い布地の上から執拗に刺激され、零は仰け反って身悶えた。

 鷲塚は舌先を蠢かせ、零をさらなる恥辱に堕とす淫猥な言葉で囁いた。

「……ぬるぬるしてる。この中はどうなっているんだ?」

「いや…あッ! お願い……もう、言わないで……」

 恥ずかしさのあまり顔を背けようとすると、敏感すぎるそこに歯を立てられる。

 髪を振り乱し、零は細い泣き声を放った。

「──ひ…うぅ……ッ」

 やがて、鷲塚は下着の隙間から指をねじ込み、秘唇の奥を奔放に掻き乱し始めた。

 鋭い快感に貫かれ、腰を波打たせた零は、きつく眉を寄せながら弱々しく頭を振った。

 ぞくぞくとする快感が背骨を駆け上がり、切迫した官能の極みに追い上げられてゆく。

 淫らな指戯に操られるがまま、零は一気に昇りつめていた。

「──あ、ああっ……ハアッ……だめ…ッ!」

 大きく喉を反り返らせ、全身を小刻みに震わせた零は、ひきつれた吐息を放った。

 絶頂の波が四肢の末端にまで押し寄せ、身体がビクビクと痙攣する。

 頭の中は霞がかかったように白く濁り、何も考えることができなかった。

 ところが、ぐったりと崩れた零を見下ろし、鷲塚は苛酷ですらある命令を囁いた。

「零、服を脱いで、四つん這いでベッドに行け」

 その言葉の意味が一瞬判らず、朦朧とした瞳で鷲塚を見返した零は、我に返った途端、大きく両目を見開いた。

「……そんな事──いや……もう、許して……」

 零は哀願するように訴えたが、鷲塚はサディスティックな冷笑を浮かべて身を引いた。

「早くしろ。できないなら、首輪を付けるぞ。
 明日、一日中犬の格好をさせられたいか?」

 恐ろしい言葉に打ちのめされた零は、屈辱に涙ぐみながら、ぎこちない足取りでソファを降りた。

 快楽の余韻で甘く痺れる身体は、思うようにならず、気を抜くと床にしゃがみ込んでしまいそうになる。

 固く両瞼を閉ざし、唇を噛みしめた零は、心を苛む恥辱に耐えながら、欲情に淡く染まった裸身を鷲塚の前にさらした。

 すでに秘密は暴かれているとはいえ、異形の肉体を明るい光の下にさらすのは、今でもどうしようもなく怖い。

 そして、肉付きの薄い裸体の中心で、鷲塚に嬲られた秘芯が熱をはらんで充血しているのがまざまざと感じられた。

 零は無意識に身を屈め、両手で我が身を隠そうとした。

 そんな零の心の裡を見透かすように、鷲塚は鋼の双眸を細め、傲慢でありながら愛撫の手を思わせる低い声で促した。

「さあ、跪いて、ベッドに行け。あんなもので、まだ終わりにしたくないだろう?」

 目も眩むような羞恥に震えながら、零はのろのろと膝をつき、両手を床に下ろした。

 ただそれだけのことで息が上がり、全身が汗ばんでくる。

 寝室に行くには、鷲塚に腰を向けなければならなかったが、そんなことをすればどうなるか──。

 考えた途端、動くことすらできなくなり、零は半泣きになりながら、その場にうずくまった。

「……お、お願い……海琉──もう、許して……」

 すると鷲塚は深い嘆息をもらし、ソファから立ち上がって零の傍らに近づいた。

 このまま許してもらえるだろうか──。

 そんな淡い期待がふと胸をよぎり、零はおずおずと顔を上げようとした。

 ところが、ほとんど同時に、身を屈めた鷲塚の手が振り下ろされる。

 ぴしゃりと大きな音を立てて、剥き出しの尻を打擲され、零はその痛みに悲鳴を上げた。

「──あうぅっ!」

「行け。ぐずぐずするな」

 突きつけられた非情の言葉。

 甘えを許さない冷たく厳しい声におののいた零は、がくがくと震える手足を踏ん張り、そろりと身体の向きを変えた。

 必死に太腿を閉じ合わせても、鷲塚には全てを見られているだろう。

 そう思うと、一歩前に進むごとに、瞳から涙が溢れ出してくる。

 いつまた打たれるかわからない緊張感と、蜜を溢れさせた媚肉に注がれる淫靡な視線。

 交錯する葛藤が、いつしか被虐的な官能を刺激し、気が遠のきそうになった。

 ハアハアと息を荒らげながら、ようやくベッドに這い上がった零は、精魂尽き果てたように突っ伏した。

 まるで長い距離を全力疾走したかのように疲れ果てている。

 すると、涙に濡れた零の顔を仰のかせた鷲塚は、あやすような優しいキスを唇に落とし、欲情に掠れた声で囁いた。

「──よくできたな、零。ご褒美をやろう」

 艶めかしく潤った花芯に、背後から猛り立った屹立を押し当てた鷲塚は、零のウエストを引き寄せるようにして一気に貫いた。

 我に返る暇も無かった。

 大きく胸を喘がせていた零は、身体の芯が強く押し開かれる感覚に仰け反り、引きつった悲鳴を迸らせていた。

「──アアァッ! ま…待って……っ……まだっ……あううぅ…ッ」

 だが、すでに熱く蕩けていた花弁は、待ちわびたように鷲塚の剛直を咥えこみ、貪欲に絡みついてゆく。

 鮮烈な衝撃に怯え、思わず前に逃れようとしたが、すかさず腰骨をがっちりとつかまれ、縫い止められてしまう。

 容赦ない強さで打ち込まれ、ゆっくりと引き抜かれてゆく男の楔に内奥を擦りたてられ、零は惑乱したようにシーツを掻きむしった。

 狂おしいほどの快感に抗うことすらできない。

 男の律動に揺さぶられながら、零はいつしか合わせるように腰をうねらせ、すすり泣いていた。