Rosariel.com
TearyDoll


24



 いつの間にか朝食が用意されたテーブルを見つめたまま、零は小さなため息をついた。

 部屋に誰かが入ってきたことを、零は全く気づかなかった。

 だが、鷲塚と2人でバスルームを使っている間に、恐らく誰かがホテルから運んできて、これらの食事を準備したのだろう。

 部屋の主である鷲塚に断りもなく、手際よく静かにテーブルセッティングが行われたはずであったが、それに関して鷲塚は何も疑問を抱いていないようであり、驚いた風もなかった。

 だとすれば、鷲塚が誰かに命じて朝食を運ばせ、そのまま帰らせたのだろう。

 彼らが一言も声を掛けてこなかったのは、鷲塚と自分が何をしているのか、知っていたからなのかもしれない。

 そこまで思い至った途端、ようやく鎮まりかけていた零の身体が再び熱を帯びた。

 鷲塚の大きなバスローブに包まれたまま、ぐったりとソファに横たわっていた零は、火照ってゆく身体をなだめるように、自分の肩を抱き締めた。

 零の身体を清めるためだけにしては、鷲塚は長い時間をかけて零を洗った。

 泡立ったボディソープが肌の上を滑るたび、先ほどまで快感に翻弄されていた零の肉体は妖しくざわめき、昂ぶってゆく。

 白い泡を作り出した大きな掌が、うなじから鎖骨へ、胸から脇腹へと下り、貴重な美術品でも扱うように優しく、丹念に洗っていった。

 鷲塚の掌、そして指先が、濡れた肌にはひどく敏感に感じられてしまい、零は声を上げまいと必死になって耐えていた。

 しかし耐えようとするほど、鷲塚の手の動きの一つ一つに反応してしまう。

「やっ…もう……いい──自分で洗うから……」

 沸き立つような快感に焦燥を感じ、零が逃れようと身を捩った途端、鷲塚は低く笑った。

「この中まで、自分で洗えるのか?」

 そう言いながら、鷲塚の指が爛れたように赤い後蕾を探りはじめた。

 疼くような快感が訪れ、零はたまらなくなって声を上げてしまった。

「いや! やあっ……触らないでっ! ああっ……」

「壁に手をついて、足を開いていろ。
 綺麗にしておかないと、後で辛い思いをするのはおまえだぞ」

 ずっ…と容赦なく指が突き入れられ、掻き出すように大きく指が曲げられる。

「ふっ…ぅ……んっ……あっ、あぅ……だ…め──」

 根元まで潜り込んだ指が、熱を持ったように痺れる媚肉を擦り、引き出そうとする。

 ひんやりと冷たい壁にすがりつきながら、腰を突き出すような格好をとらされた零は、噛みしめた唇から喘ぐような声を漏らした。

 肩の骨が美しく浮き立ち、背筋がしなやかにたわみながら弧を描き、波うつ。

 しっとりと濡れた肌が白く輝き、透明な雫が滴り落ちるのを見下ろしていた鷲塚は、その優美な曲線をなぞるように唇を触れさせた。

 その瞬間、秘孔を指で犯されたまま零の全身が震え、ひときわ艶めかしい声を反響させながら零が果てた。

 全身が弛緩し、頽れそうになる肉体を支えてやりながら、鷲塚が秘蕾を2本の指で押し開くと、欲望の残滓が流れ落ちてくる。

 己が放った白濁を丹念に掻き出した鷲塚は、最後に、もはや微塵も力が残っていないというようになされるがままになっている零の身体に温かいシャワーを浴びせた。


 ぐったりと目を閉じて、ソファに横たわっていた零は、額に柔らかなキスが落とされた事を、まるで夢の中の出来事のように感じていた。

「──零、食事はどうする?」

 のろのろとセピアの瞳を開くと、ダークグレーのスーツに着替えた鷲塚が、ネクタイを締め直しながらソファの肘掛けに腰を下ろした。

 昨夜から何も口にしていないというのに、食欲が全く失せていた零は、秀麗な鷲塚の顔を見返しながら小さく首を横に振った。

 鷲塚はわずかに眉根を寄せると、片手を伸ばし、濡れている亜麻色の髪を指先で梳いた。

「少し休んで食べられるようになったら、何か口に入れておけ。
 また倒れて、薫を呼ぶはめになったら、あいつがうるさく騒ぐだろうからな」

 優しい指の感触がひどく心地よく感じられ、唇に微笑みを浮かべそうになった零は、突然、下身に鈍い痛みを感じて顔をしかめた。

「時間がないから……しないって…言ったのに──」

 思わず咎めるような言葉をもらすと、鷲塚の指が軽く唇を押さえ、そしてからかうように下唇をなぞり始めた。

「5分以内に俺をいかせられるようになったら、約束は守ってやる。
 帰ってきたら、今度はゆっくりと練習させてやるから、安心しろ」

 笑いを含んだ声と言葉に、零は恥ずかしさのあまり顔を背けた。

 しかし、不意に身体を抱き上げられ、驚く間もなく、零はベッドルームに運ばれていた。

「零──今夜は嫌がっても眠らせない。
 朝が来るまでゆっくりと抱いてやるから、力尽きないように体力をつけておけ」

 その言葉に畏れすら感じた零は、セピアの瞳を瞠って鷲塚を見返した。

 間近から見下ろしてくる鋼の瞳は、冗談を言っているような様子はない。

 それどころか、恐ろしいまでの情熱と欲望が溶け込み、その眼差しの強さに全身が震えた。

「……でも、そんな事……私──」

 狂おしいほどに凄絶な快感を与えられる事に、零は本能的に怖じ気づいたが、一方で肉体は快楽の予感に早くもわななき始めていた。

「眠ったオンナを抱く趣味はないと、前に言っただろう?
 心配するな──眠る気にもならないようにしてやる。
 俺を待ちくたびれさせたお仕置きにしては、優しい方だと思うがな」

 零の言葉を聞きとがめ、軽く片眉をつり上げて鷲塚はそう言った。

 そしてふっと唇に甘く、残酷な微笑を刻み、零の唇に軽く唇を重ね合わせた。

「──零、俺に抱かれるのが嫌なのか?」

 その問いに驚き、零がふるふると小さくかぶりを振ると、満足したように鋼の双眸を細めた鷲塚は、前髪のかかった白い額にキスを落とした。

「だったら、俺が帰ってくるまで、今日は大人しく待っていろ。
 後で新堂を寄こすから、食べたいものがあれば、あいつに言え──判ったか?」

「……新堂さん?」

 見開かれたセピアの瞳を見下ろし、鷲塚はうなずいた。

「そうだ。しばらくはおまえの専属として付き添わせる。
 出かける時はそう言えばいい。
 ただし、一人で出歩こうなどと思うな。
 まだ全てが片づいた訳ではないから、何が起こっても不思議じゃない」

「外に出ても……いいの?」

「ここに帰ってくるのが条件だ──おまえを閉じこめておきたいのは山々だがな。
 だが、俺から逃げようとしたら、もう一度監禁して、今度は鎖に繋いでしまうぞ」

 その言葉を黙って聞いていた零は、両腕を伸ばし、鷲塚の首に絡めた。

「──逃げないよ……私は、海琉の傍にいるって決めたから。
 離れていても、いつもここに帰りたいって思ってた。
 私の居場所は…もう、あなたの傍しかないから……何があっても、私はずっと傍にいて、海琉だけを見てる」

 その瞬間、強く抱き寄せられた零は、鷲塚に深く唇を塞がれていた。

 唇が吸われ、鷲塚の舌先が遊ぶように口の中をなぞると、その快美感に零は目眩を起こしそうになった。

 こぼれ落ちた吐息は甘く、束の間の別れを惜しむように震える。

 差し迫った時間を知らせるように携帯電話が鳴り始めると、鷲塚はようやく零を解放した。

 いかにも不機嫌そうな低音で電話に応じる鷲塚を見上げていた零は、胸の奥が今まで感じた事もないような温もりで満たされていることを感じた。

 瞼を閉ざし、そっと両手で胸を押さえる。

 本当に幸福なのだと感じられる喜びに、セピアの瞳から一筋の涙が静かにこぼれ落ちた。