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TearyDoll


48



 鷲塚の行動が理解できず、零は目を瞠ったままこくりと喉を喘がせた。

 滑らかな白い喉元の動きに誘われたように、鷲塚の唇が落とされ、濡れた舌が皮膚に這う。

 急所を探る獣のような愛撫に、零は身動きできずにいたが、不意に新堂の目があることを思い出して逃れようと抗った。

「──やめてっ! いやっ……海琉、イヤだ…っ!」

 零の抵抗をものともせず、鷲塚は細い腕を片手で封じ、反対側の手を衣服の中へと滑り込ませる。

 胸の突起を指先で刺激され、細い悲鳴と共に身体が跳ねた。

 鷲塚が何を考え、何故こんな事をするのか──それが全く判らず、零は混乱に陥ったまま必死で首を振る。

 突然の事に驚愕していたのは新堂も同じらしく、彼の動揺した表情が零の視界に入った。

 互いの視線がぶつかった瞬間、はっとしたように新堂は顔を背けてしまい、あまりの恥辱に零は指先が冷たくなるような感覚を味わった。

「……やめて……お願い、もう……やめて──」

 か細い哀願の言葉と共に、目尻から一筋の涙がこぼれ落ちる。

 重い体躯の下に零を組み敷いていた鷲塚は、一切の感情が失せた双眸で新堂を睨み、「出て行け」と言うように顎をしゃくった。

 無言で頭を下げ、新堂が足早に部屋から出て行った途端、零の身体がぐったりと弛緩した。

 安堵のためか、涙が堰を切ったように溢れて頬を濡らし、零は顔を背けたまま唇を噛んだ。

「零──何度も言ったはずだ、俺は極道だと。
 おまえを愛していても、変わらないものも、変えられないものもある」

 不意に、情欲に駆られた気配が微塵もない冷淡な声で、鷲塚が呟くようにそう言った。

「……海琉──?」

 その声音に秘められた感情に反応して、零がはっと向き直ると、鷲塚は口許に皮肉げな微笑を刻んだまま、そっと唇を重ね合わせた。

 反応を探るような口づけは、やがて熱を帯びたものに変わり、深く交わり始める。

 互いの唾液が溶け合い、舌が絡み合うと、零の唇から艶めいた吐息がこぼれた。

 ちゅっ…と零の舌を吸った鷲塚は、息を喘がせている零の紅潮した瞳を見下ろし、ひどく尊大で魅惑的な笑みを浮かべた。

「俺は、人前の中でもおまえを抱けるし、余計におまえを啼かせたくなる。
 そういうヤクザな男が、大事な身内の相手だと判って、『はい、判りました』と納得する家族がいると思うか?
 カタギの人間なら、普通はどうあっても反対するだろう」

「それは……そうだけど──」

 困惑気味に零が言葉を返すと、鷲塚は揶揄するような口調でさらに言った。

「ましてや、おまえの妹は極度のブラコンで、頭でっかちになった十代のガキだ。
 おまえが一生懸命説明したところで、理解などできないだろうよ」

 くつくつと低く笑った鷲塚は、戸惑っている零の唇にもう一度唇を重ね合わせる。

 躊躇いつつも、応じるようにキスを返した零は、目眩を起こしそうな快美感に襲われ、すがりつくように鷲塚の背を抱き締めた。

 官能的なキスの余韻に零が惑わされている間に、鷲塚は零が身につけていたベージュのニットをたくし上げ、つんと凝っている淡い胸の突起に唇を押しつけた。

「──あっ……やっ…ダメ──咲妃が……」

 きつく唇で吸われ、反対側を指の腹でやんわりと擦られると、声を殺すことができなくなって、零は口を片手で塞いだ。

「どうせ寝てるんだろう? 
 心配するな──声を立てなければ聞こえない。
 起き出してきたら……その時は止めてやる」

「そ……そんな事、言ったって──アッ! う…あっ……くっ……」

 軽く歯を立てられた瞬間、零はびくっと身体を震わせ、慌てたように唇を噛んだ。

 反り返った胸元を愛撫しながら、鷲塚は零の表情をうかがい、ふっと残酷な微笑を浮かべる。

 快感に喘ぐ自分自身を恥じて、必死で声を立てまいと抗い、苦悶する零の表情は雄の欲望を煽り、ぞくぞくするほどに美しい。

 しかし、快楽の狭間で、零が妹の存在を気にするように瞳をゲストルームに向けた瞬間、鷲塚の胸の裡に言い様の無い凶暴な苛立ちが生まれた。

 唾液で濡れて、硬く立ち上がっている左右の果実は、美味そうなほどに色づいており、その粒を片手で刺激しながら、鷲塚は手早くネクタイを引き抜く。

 快感に耐えることで精一杯な零の目許をネクタイで覆った途端、驚いたように強張った声が上がった。

「海琉……っ! 何を──っ!?」

 言葉にならない悲鳴を封じるようにキスで唇を塞ぎ、零の後頭部でほどけないようにネクタイを結わえる。

「零、おまえは俺のものだ──俺だけを見て、俺だけを感じていろ」

 傲慢極まりない独占欲を露わにして、鷲塚は零が身に纏っている衣服を全て剥ぎ取った。

 抵抗しようとする零を押さえつけた鷲塚は、両膝を大きく開かせて己の身体をその間に割り込ませる。

 両膝に手をかけたまま身体をずらし、鷲塚は零の他の誰とも違う秘園に口づけた。

「ひっ…ああっ! やめて…やめて──ッ!」

 目隠しをされたまま行われる口戯の刺激に、零は一瞬我を忘れて悲鳴を上げていた。

「声を上げたら、おまえの妹に聞こえるぞ、零。
 それに、おまえのここは、もうとろとろに溶けているし──こっちも勃ってる」

 残酷な含み笑いをして、敏感な花茎の尖端を鷲塚は舌先で探った。

 背中を仰け反らせた零の大腿を押さえたまま、蜜液に濡れた花弁を舌でこじあけ、下から突起のある上方へ、ねっとりと舌を這わせ始める。

 ヒッ……と喉を鳴らした零は、自分の口を押さえたまま、必死で首を横に振った。

 ネクタイの下から滲み出した涙が流れ落ちたが、鷲塚は愛撫する手を休めなかった。

「はっ…あっ……あっ…くうぅっ──」

 がくがくと身体を痙攣させ、絶頂から突き落とされた零は、荒い呼吸を繰りかえしながら、ぐったりとソファにもたれかかった。

 視界を塞がれた事で、いつも以上に感覚が鋭敏になったような気がする。

 感じすぎるほどに感じる身体を持て余し、鷲塚が体勢を入れ替えても、零はぐったりとして身動きすることもできなかった。

 背後に座った鷲塚の手が、胸元と花唇を再び愛撫し始めると、零は大きく足を開かされたまま昇りつめ、そして──鷲塚の熱い怒張を受け入れていた。




 緊張の連続でさすがに疲労が溜まっていたのか、豪華な広いベッドに横たわった途端、咲妃は深い眠りに落ちていた。

 昏々と眠り続け、ふっと意識が覚醒に向かい始めた瞬間、どこからともなく零がすすり泣く声が聞こえてきた。

 どうして零が泣いているのだろうと不思議に思い、咲妃は夢の中で眉をひそめた。

(──ああ、そうだ……お兄ちゃんは、ヤクザに掴まってしまって……)

 慈悲も無く、良心も無い──そんな冷酷非情で恐ろしい男に、いつも優しかった兄は騙され、捕らえられてしまったのだ。

(お兄ちゃん、お人好しだから──すぐに騙されちゃうんだよ)

 でなければ、あんな優しさの欠片も持ち合わせないような男を、零が愛するはずなどない。

 そう思った時、零のか細い悲鳴が聞こえた。

 慌ててベッドから飛び起きた咲妃は、足音を忍ばせてドアを開け、リビングへと続く廊下に出た。

 壁に身を隠すようにしてリビングルームの様子をうかがった咲妃は、その光景を見た瞬間、頭の中が真っ白になるほどの衝撃を受けた。

「あっ…あ、ああ……ゆ、許して──もう……」

 しなやかな白い裸体がリズミカルに波うち、女性にしては薄すぎる胸元には汗の玉が光っている。

 ソファに座った鷲塚という男は、零のうなじや肩に口づけながら、細い腰をつかんで上下に揺さぶっているようだった。

 そして──大きく開かされた零の足の狭間に、信じられないほど太く、長い肉柱が繰りかえし出入りしている。

 スーツの上着とネクタイを取っただけの鷲塚と、着るもの全てを剥ぎ取られ、生まれたままの姿で翻弄されている零──。

 その姿はまだ若い咲妃には衝撃的で、あまりにも刺激が強い。

 声を出すこともできずに茫然と立ちつくしていた咲妃は、零の目がネクタイで覆われていることに気づき、さらにショックを受けた。