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今夜、あなたの猫になる



<31>



 ところが乳首に歯を立てられた瞬間、びりっと背筋に電流が走り、躰が跳ねた。

 その刺激に煽られたように、半勃ちになっていたペニスが一気に充血し、硬く反り返ってしまう。

「……お、男の躰を触って、何が楽しいんだよ?」

 自身の反応に狼狽し、大貴は激しく主張する前方を隠すようにしながら、小さな突起に執着する庄領に聞いた。

 頬を赤らめた大貴を見上げた庄領は、硬く凝った乳首を舌先でなぞり上げ、勃起した男の証を掌で包み込んだ。

「ストイックに見えるこの躰は、実はとても感じやすくできていて、触れていくうちにだんだん淫らになっていく。
 だから、私の一物を美味そうに呑み込んで、いやらしく悶えるお前を見ているのは、何よりも楽しいぞ」 

 卑猥でありながらも理路整然とした答えを聞いて、大貴は恥ずかしさのあまり気が遠のきそうになった。

「──バっ…バカ! そんな事言うな!」

「お前が聞いたんだろう? ちゃんと理解できるまで、教えてやりたいが」

 くすくすと笑いながら、庄領は逃げようとする大貴を抱き寄せ、その両足の間に自分の足を絡めた。

 そうされてしまうと、身動きができなくなる。

「……こうして、お前を抱いている時は、余計な事を何も考えないで、大貴の事だけを考えていられる。
 それが私にとっては、ひとときの安らぎになるんだ」

「──安らぎ?」

 思いがけない言葉に、じたばたしていた大貴は驚いて動きを止めた。

 どちらかと言えば、自分は安らぎや癒しといったものとは真反対だと思うのだ。

 優衣からも指摘された通り、自分勝手だし、思いやりも無いし、薄情だとよく言われるくらいなのだから。

「……前から思ってたけど……あんたはちょっと、変だと思う」

「『あんた』じゃないだろう?」

 訂正され、ぐっと声を詰まらせた大貴は、激しい照れ臭さに襲われながら言葉を継いだ。

「……ち、千晴は、絶対に変だ!
 俺なんかより、もっと優しい人いるだろ?
 俺は別に……千晴を、癒したいとか、そんな事、全然、思って無いし……」

 大貴が口ごもると、庄領はくくっと喉を鳴らし、互いの唇が触れ合うほど近くで囁いた。

「お前はそのままでいい。私はそういうお前を愛しているんだ」

 掠れた声と吐息が、大貴の躰にさざなみを起こす。

 はっと息を飲みこむと、唇が重なり合った。

 いつの間にか仰向けに返されていた大貴は、唇が離れると、ぼうっとした眼差しで男の顔を見つめた。

 二人の唇を繋ぐ透明な唾液が細い糸を引き、途切れる。

 その様がひどく淫靡に見えた。

「──ちゃんと判ったか?」

 艶冶な笑みを浮かべた庄領が、そう問いかける。

「……何が?」

 キスや、その他あれこれの余韻で朦朧となっていたため、訳も判らず聞き返すと、男は漆黒の双瞳を細めた。

「私が、お前の躰に触っていて楽しいかという、質問の答えだ」

「……あ、ああ。うん」

 快感に酔いしれて頭が真っ白になり、すっかり自分の発言を忘れていたのだが、その言葉で思い出した大貴は慌ててうなずいた。

「言ってみろ、大貴──私の想いが、お前にちゃんと伝わっているのか聞いてみたい」

 だが、唐突にそう促され、大貴は混乱した。

 目を見開いた大貴を見下ろし、庄領は微笑んだ。

「理解できなかったのなら、もう一度繰り返そうか?」

「──い、いいよ。もう、判ったから……!」

 聞いている方が恥ずかしくなるようなセリフを、こんなに間近で繰り返されたら、ベッドに穴を掘ってでも逃げ出したくなるだろう。

 それだけ心臓に悪いのだ。

「なら、言えるだろう?」

 だが、どうやら庄領は、逃がしてくれないらしい。

 言葉の魔法で心を絡め取ろうというのか、もう一度大貴に促した。

「……つ、つまり……千晴は、俺の躰を抱くのが、好きってことだろ?」

 どもりながら大貴が答えると、庄領は軽く片眉をつり上げて首を傾げた。

「間違ってはいないが、もの足りない答えだな」

「……わ、判ったよ。だから……その、千晴は……俺の事が……好きなんだろ?」

 消え入りそうな声で呟くと、庄領は、顔を背けようとする大貴の顎を押さえて微笑んだ。

「『好き』とは言っていない。愛していると言ったんだ。
 ほら、もう一度最初から言ってごらん」

 物忘れの激しい大貴を戒めるように、庄領は容赦しなかった。

 茹で蛸のように真っ赤になった大貴は、黒く耀う男の瞳に視線を絡め取られたまま、痺れてしまった舌を必死で動かした。

「……千晴は……俺を……愛してる」

「──良い子だ」

 優しく囁かれ、口づけが落ちてくると、信じられないくらい躰が熱く昂ぶった。

 息を喘がせ、瞳を潤ませた大貴を見下ろし、男がひんやりとした声で問いかけてくる。

「……お前は? 私が欲しいか?」

 快感を求める心の琴線が、その声ひとつでキンと弾かれる。

「……ぅあっ…も、もう……止めてくれ……ッ」

 言葉で嬲られているような快感と切迫感に、大貴が思わず声をうわずらせた。

 しかし庄領はサディスティックにも見える微笑を浮かべ、ぴくぴくと脈動する大貴のペニスを愛撫した。

「意地を張られると、ますます虐めたくなる。
 お前は本当に……食べてしまいたくなるほど可愛い」

 くくっと喉を震わせ、躰をずらした庄領は、大貴のペニスを口に咥えた。

「アアアッ……ああっ…はあぁっ…んっ……も、もう……イク…ッ!」

 唇と舌を使ってしゃぶられると、大貴はあられもなく腰を振り、一気に射精まで駆け上ろうとした。

 だが、ペニスの付け根をきつく絞った庄領は、大貴の両足を肩まで押し上げ、M字に開かせた。

「ここもまだ……柔らかく蕩けているな」

 剥き出しになった後肛を舐められ、舌を差し込まれると、さらに欲情が体内で荒れ狂う。

「うぅああっ……ダ、ダメ…だっ……そこっ…舐めたら……またっ…おかしくなるっ……」

 グチュグチュと突き刺さる舌の動きに、大貴は夢中になって腰を振り乱した。

 昨夜も散々弄ばれた後蕾は、さらに敏感に反応して蠢いてしまう。

「言うんだ、大貴──この中に、私が欲しいと」

 指で責められると、さらに強い刺激が全身を貫く。

 だが、それでももどかしさを感じてしまい、いつしか惑乱した大貴は両膝を抱えて、譫言のように口走っていた。

「あ、ああっ……千晴……ここに……挿れてくれッ。あんたが……欲しいんだ…ッ」

 狂ったように昂ぶる疼きに耐えられなくなり、大貴が求めると、庄領は猛々しい剛直を押し当て、ぐいと力を入れて奥へと突き入れた。

「ぅああっ……ひっ…イイっ……何でっ……こんなに……ッ……くああっ!」

 一つに繋がった刹那、凄まじい快感が交流し、大貴はのたうっていた。

 強く突き上げられながらも、苦痛よりも深い官能に支配される。

 さらに腰が高く持ち上がると、庄領の男根が自分の肛門を押し広げ、出入りする様が見えた。

 それはまるで、大きな蛇が大貴の体内にもぐりこみ、体内を食い荒らそうとしているようにも見えた。

「……ひううっ……あ、ああっ……イ、イクッ!」

 ずるずると粘膜を擦り立てられると、鮮烈な快感が弾ける。

 頭を振り乱した大貴は、全身を痙攣させ、欲望の奔流を解き放っていた。

「……あっ…アアッ!」

 勢いよく飛び散った白濁が、自分自身の顔に降りかかってくる。

 気持ち悪いはずなのに、頭の芯がぼうと溶けてしまい、不快には感じなかった。

 息を喘がせながら、唇についた粘液を舐めとると、とろりとした感触が舌先に残る。

 次の瞬間、息を荒げた庄領が、ぐっと顔を近づけ、大貴の唇を唇で塞いでいた。

 深々と突き刺さった屹立の律動が激しさを増してゆく。

 過敏になった躰を貪られ、大貴は悲鳴のような嬌声を上げ続けた。

「ハアアッ……ああっ…ああっ……だ、ダメだ……千晴…ッ……ま、また……ッ!」

 根元まで突き入れられた瞬間、庄領の欲望が爆ぜる。

 ドクドクと注がれる雄精が引き金となり、大貴は続けざまに絶頂を極めていた。

 頭の中で閃光が弾け、躰がばらばらになって崩れ落ちてゆく錯覚──。

「……ぁああ…はっ…はあっ……」

 まだ深く繋がりあったまま、庄領が唇を寄せてくる。

 その弾んだ吐息を感じながら、キスを交わすうちに、大貴は喘ぐように呟いていた。

「──きっと……あんただけだ……俺を、こんな風に……メチャクチャにするのは……」

「『あんた』じゃないだろう?」

 細かく指摘する我が儘な男を、大貴がじろりと睨もうとした。

 だが、発情して潤んだ瞳では、あまり迫力は無い気もした。

「……千晴だって、俺の事、『君』とか『お前』って呼ぶじゃねえか!
 それと同じだろーが!」

 すると庄領は、「おや」と言うように首を傾げ、急に嬉しそうな微笑を浮かべた。

「気にしていたのか? なら、次からは気をつけて名前を呼ぼう」

「違うだろ! 別に『お前』でも何でもいいけど、いちいち名前を呼ばせんな!
 恥ずかしいだろ!」

「私は、大貴に名前を呼ばれるのが好きなんだ」

 率直な答えが返ってくると、大貴は思わず呆気に取られ、口をぱくぱくさせた。

「だが……そうだな。そんなに恥ずかしがるなら、セックスの時以外は、好きに呼べばいい。 お前がイキそうになる時に、名前を呼ばれると、鳥肌が立つほどゾクゾクする」

 茫然としている大貴に顔を寄せ、庄領は艶めかしい声音で促した。

「私の名前を呼んでくれないか?」

「──だっ…だって……もうッ!」

 大貴が顔を赤らめると、庄領は深い溜息をつきながら、ゆるやかに腰を揺すった。

 いつの間にか硬度を取り戻した屹立が、大貴の内側を掻き乱してゆく。

「やっ……やだって……うぁあッ……!
 も、もう……これ以上は……無理っ……抜いてくれっ……」

 逃れようともがいた大貴を抱きすくめ、庄領は貫いたまま体位を変えた。

 大貴の右太腿を抱え上げながら、側臥の形でゆっくりと腰を使い始める。

「……ひいいッ……やっ…やめろ…千晴っ……あひっ……死ぬっ……死んじゃうッ……」

「いい声だ、大貴──せっかくの休日だからな。
 今日は心ゆくまでお互いを堪能しようか」

 くすくすと笑いながら、庄領は淫蕩な律動を繰り返し、官能を煽り立ててゆく。

 シーツにしがみついたまま肛腔を犯されていた大貴は、底無しの愉悦へと引きずり戻されていった。