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春耀幻花


<15>



 褥の上に落ちた白絹の上で、八尋の肩となだらかな胸が露わになる。

 辛うじて腰に絡みついていた身ごろも、あと少し動けば滑り落ちてゆきそうだった。

  何かに気づいたのか……鷹巳が訝し気に双眸を眇めると、八尋はひくりと息を詰まらせ、もう一度膝を閉じあわせようと力を込めた。

 このままでは、全てを、鷹巳に見られて、暴かれてしまう。

 せめて灯明(あかり)を消してくれたなら、鷹巳には気づかれないよう、少しでも秘密を隠すことができるのに。

 鷹巳の視線から逃れようと、八尋が布団の上をいざりながら必死にもがいていると、厳しい叱責に打ち据えられた。

「八尋──大人しくしていろ」

 びしりと鞭打つような鋭い一喝が、抗う力を奪い去ってしまう。

 恥辱に赤く染まった顔を隠すように両腕を交差させ、ぐったりと放心して横たわった八尋を、鷹巳は冷たく見下ろしているようだった。

 あんなに優しかったのに、今は怖くて、鷹巳の顔を見ることができない。

 好きになった人だから、恥ずかしいところや、汚いものなど見せたくないのに、どうして許してもらえないのだろう。

「膝を立てて、足を開け。私がいいと言うまで、動くな」

 どうして、鷹巳は、こんな酷いことをするのだろう──これでは、瀬織孝義や芳沢と同じだ……。

 逆らうこともできず、のろのろと膝を再び開いてゆくと、羞恥と屈辱に躰が震えてしまう。

 涙を溜めた紫黒の瞳をぎゅっと瞑った八尋は、微かに息を呑むような鷹巳の気配を感じた。

 見られた。気づいてしまったのだ、彼は……八尋の、異形に。だから、決して見られたくはなかったのに!

 秘められた造作を凝視される恥ずかしさが、血を沸き立たせ、全身を熱く燃え盛らせる。

 けれど心は深く傷ついて、涙がぽろぽろと溢れ出し、八尋は肩を震わせてしゃくり上げた。

「男とは言えず……さりとて女と言うにも無理がある。
 おまえは、ふたなりだったというわけか。
 そして、ここにある鱗の痣は……御巫家の神妃(しんき)にだけ現れる徴なのだそうだ。
 おまえの母親にも、同じ痣があったのだろう?」

 驚いてはいるのだろうが、鷹巳の声に揺らぎはなく、観察者の冷やかさをはらむ。

 けれど指先は淫らにそよぎ、日頃は陰となった柔肌を撫で、八尋の内股に刻まれた痣をくすぐってゆくのだ。

「……うっ、あっ──」

 ぞろりと神経を直接刺激されるような感覚に、八尋はびくりと震え、快感を堪えるように敷布を握り締める。

 鷹巳の指先は止まることなく、奥に息づく八尋の性器に──両性を形作る不可思議な陰花を探り始めた。

「私は、随分と珍しいフィアンセを受け取ったようだ。
 これから、どんな風におまえが変わってゆくのか、愉しみだな」

 感情のうかがい知れない淡々とした声とは裏腹に、八尋の性器を包み込む手は甘く淫らだった。

 明らかに男の欲望を表して膨れた肉茎と、差し入れた指を素直に呑み込む淫裂の様に、鷹巳も純粋な興味をそそられているのか、戯れるように繰り返し触れる。

 つつましやかな淡い花弁の結び目にある、雄の形を有した楔がくっきりと勃ち上がると、鷹巳の掌に囚われて、柔らかく扱かれてしまった。

「あぅ……ぅっ…うぅっ……くうぅっ……」

 全身を貫くような快感に襲われ、膝を立てた八尋の腰は浮き上がり、翻弄されるままびくびくと跳ね上がる。

 下腹からせり上がる精蜜の噴出に怯え、喉を反り返らせた八尋は全身を硬直させた。

 その途端、鷹巳の指が付け根を絞るように回され、射精を封じてしまう。

「まだ達くな。おまえの躰の秘密を、私が全て探り出すまでは」

 叱責した鷹巳は、長襦袢の着付けに使われた絹の腰紐を引き抜くと、欲情の形に萌した八尋の男根にくるくると巻き付けてしまう。

 最後に付け根を引き絞り、美しい色合いの蝶々に結わえた。

「…ひ…ぃい…あぁっ……ぅあっ……」

 重く凝った熱を散らすことができず、下肢がどろどろと溶けてゆくような苦しみに苛まれ、八尋は腰を振り立ててしまう。

 嫌だと声を上げようとしても、喉は虚しく鳴るばかりで、言葉にならない。      

 酷い事をしないと言っていたのに、八尋の男根は惨く弄ばれて、尖端からとろとろと涙を溢れさせていた。

 鷹巳が何を考えているのか、自分がどうなってしまうのか判らなくて、怖くてたまらない。

 大きく開かされた膝の間に鷹巳は腰を入れると、八尋の唇を求めるように覆いかぶさってくる。

 とっさに両腕を突き出し、逞しい胸板を押し返そうとした八尋の両腕は、あっけなく頭上に押さえ込まれてしまった。

「どんなに抗っても、私は今夜からおまえを抱く。
 逃れることはできないのだから、素直に従え。
 それとも……いっそ逆らえないよう、縛ってやろうか?
 そうすればおまえは、全ての罪を私に委ねて、存分に啼けるだろう?」

 最後の囁きは淫靡な愛撫のさなかに降り注ぎ、八尋は戦慄と快感を同時に味わっていた。

 ぎくりとして目を瞠ると、鷹巳は八尋を見つめたまま残酷な笑みを閃かせ、右手の人差し指を花蜜をこぼす秘裂につぷりと沈める。

「瀬織孝義の責めを受けるおまえの姿は、ぞくぞくするほど美しくて、私も久しぶりに欲情した。
 私のこの手でおまえを縛って、もっと淫らに咲かせてみたい。
 悦楽に溺れるほど、おまえは美しく狂うだろう」

 あんなに優しかったのに……何故、鷹巳はこんな風に八尋を辱め、苦しむ姿を見て微笑んでいるのだろう。

 鷹巳の長い指が柔らかな肉襞をなぞるように蠢くと、八尋は唇を噛みしめて喘ぎを殺した。

 快楽に抗えず、浅ましいほど感じてしまう八尋の姿が、それほどまでに面白いのだろうか。

 だから、父も芳沢も、そして鷹巳までも、八尋を嬲って愉しむのだろうか。

 ほろりと涙が目尻からこぼれ落ちると、下身の狭間に鷹巳の顔が寄せられてきた。

 瞬時の躊躇いもなく、鷹巳は怯えてうな垂れかけた肉茎を唇に含み、柔らかく甘噛みを加える。

 絹の腰紐越しに感じる硬い歯の感触に、八尋の躰は爆ぜたように震えた。

 尖端を舐られるとたまらなくなり、どうしても腰を引いてしまう。

「動くなと言ったはずだ──逆らった仕置きに、おまえのここを噛み切ってやろうか?」

 卑猥な刺激に反応して充血し、再び硬く膨らんでしまう屹立に、もう一度歯が当てられる。

 八重歯なのか、鷹巳の歯は獣の牙のように尖っていて、繊細な部分に食い込む感触に八尋は戦慄した。

 本当に、噛み千切られてしまったら……本能的な恐怖と不安がせり上がり、八尋はいやいやと首を左右に振った。

 嗚咽をこぼし、小刻みに震えながらも動きを止めた八尋に満足したのか、鷹巳は剥き出しになった男根の穂先をくすぐるように舌を絡めてくる。

「うっ…うう……ううぅ──ッ」

 喘ぎを殺そうと唇を噛み締め、それでも耐えきれずに指を噛もうとすると、八尋の抵抗を認めた鷹巳は、口に運ばれる手をつかみ取ってしまう。

 上半身を抱き寄せられ、やっと解放されたのだと安堵のため息をついたが、すぐに両手首を柔らかな兵児帯で戒められていた。

「おまえはもう、私のものだ。
 たとえおまえ自身であれ、自分を傷つけることは許さない。
 今後は、不用意に傷を作ったり、私以外の者に触れさせでもしたら、その度に仕置きをするから覚悟するんだな」

 残酷な言葉にショックを受け、「いや」と口を開きかけた途端、強引なキスに封じられる。

 柔らかな口腔を荒々しく蹂躙され、舌を抜かれるような激しい口づけから逃れようにも、後ろ手に拘束された両腕は何の役にも立たない。

 鷹巳は八尋の体を返し、背後から抱きすくめるような形で胡坐をかくと、八尋の両膝を自分の足で絡めとってしまった。

 開かされた大腿の中心に、綺麗な腰ひもに結わえられた八尋の肉茎が淫らにそそり立ち、その下方に弄ばれた赤い果肉が花開いている。

 無意識に目線が引き寄せられ、己自身のおぞましい変化に気づいた八尋は、全身を恥辱で火照らせ、荒い息を吐いて薄い胸を喘がせた。

 見るに耐えず、鷹巳の拘束から逃れようともがいたが、強く顎をつかまれてしまい、再び口づけに覆われた。

「……ぅうっ……んっ……うぅーッ!」

 首を振ろうとしても、巧みなキスは八尋から抗いを奪い、頭と躰の芯を蕩けさせてゆく。

 躰の全てに、鷹巳が絡みついてくる。

 敏感な舌先に絡みつく鷹巳の唇や舌の感触に惚けてしまうと、無情に暴かれた秘密の花がじゅくりと疼き、淫らな熱をはらんだ。

 鷹巳の躰から立ちのぼる薫りが熱に溶けて強まり、目に見えない覆いとなって、八尋の全身を包み込んでゆく。

 鼻を抜ける呻き、口の端からこぼれ落ちる喘ぎと交わりながら、体中の細胞に鷹巳という存在が沁みこんでくる。

 執拗に口づけてくる鷹巳のことしか考えられなくなり、抵抗を放棄した躰がくたりともたれると、長く優雅な指先が秘裂の奥をゆるりとなぞった。

「……ぁあっ…あっ…はぁっ……」

 唇が痺れたように緩んでしまい、甘く溶けた愉悦の音が、八尋の唇からこぼれ落ちた。