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「嘘つきだな、悠利──嘘はいけないと、幼稚園で教えてるんじゃないのか?」

 淫猥に付け根から上下にしごく手が悠利の官能を呼び覚まし、翻弄する。

 快感の中で初めて呼び捨てにされた自分の名前は、ひどく悩ましく艶やかな響きを伴ってふわりと耳元に落ちた。

「──あっ…あ、あっ……やあっ…も、もう、いやーっ!」

 身体が熱くなり、芯から突き上げてくる大きなうねりに飲み込まれ、一気に爆発する。

 悲鳴を放ち、背中を仰け反らせた悠利は、次の瞬間には発作を起こしたように痙攣した。

 腹部に熱い飛沫がかかったのをぼんやりと感じつつ、目を閉じたまま悠利は荒い呼吸を繰り返していた。

 痺れたように動かなかった身体に感覚が戻ってくると、羞恥や屈辱が悠利の心を苛み、目尻から透明な雫が伝い落ちた。

「悠利、泣いていないで、素直になってごらん──辛いばかりじゃないだろう?」

 なだめるような言葉が囁かれ、次々と流れる涙を唇がついばんでいく。

 何故東山がこんな事をするのか全く理解できずにいた悠利は、前と同じ優しい声音にすがるように、必死で首を横に振った。

 しかしこのまま解放してくれるのではいかという望みは破られ、次にもたらされたのはさらなる不安だった。

「仕方がないな──暴れると傷つけてしまうから、今日だけ特別だ。
 明日からは、時間をかけてゆっくりほぐして、広げてあげよう」

 困ったというニュアンスの言葉ではあったが、その口調はひどく楽しそうだった。

 喉の奥で低く笑った東山は、悠利の両手を繋ぐチェーンをカチリと外すと、それをヘッドボードの装飾的な金属細工に回して固定し直した。

 うつ伏せに返された悠利は、両腕がほどんど動かせない事に気づくと、そこから逃れようとして身体を捩らせた。

 しかし頭と肩をベッドに押しつけられたまま、腰を持ち上げられてしまい、腹部に柔らかな枕を押し込まれると、さすがに狼狽した悲鳴を上げた。

「や、やめてください! お願い──もうやめて!」

 足のチェーンも固定されて膝を閉ざせなくなると、高く臀部を突きだした凄まじい格好になる。

 自分ですら目にすることのない秘部をさらけ出され、ほとんど初対面の男に見られるという羞恥に、悠利は身体から火が噴きそうなほどの屈辱を感じた。

 しかし悠利の必死の哀願を嘲笑うように薄く唇をつり上げた東山は、背後から白く滑らかな双丘に両手をかけると、秘やかな蕾を剥き出しにさせた。

「悠利のここは綺麗だね──まだ男を受け入れたことはないんだろう?」

「いやだっ、見ないで! いやっ……ああっ、いやああーッ!」

 悠利の悲痛な叫びを無視した東山は、サイドテーブルの引出から青い小瓶を取り出すと、金色の蓋を開けて傾けた。

 小瓶から滴り落ちた乳白色のオイルは、双丘の狭間に流れ込み、秘蕾の窪みに溜まる。

 その冷たい感触にヒッと喉が鳴り、悠利の全身に震えが走った。

「心配しなくても、すぐに気持ちよくてたまらなくなる。
 一度ここで快感を覚えたら、女のように深い快感が持続するようになるからね。
 きっと病みつきになって、私から離れられなくなる──楽しみだね」

 くすくすと笑いながら、東山はオイルに浸した人差し指を、悠利の後花に押し当てた。

「ああっ、や…いや…やめてっ……くううっ!」

「これだけ濡らしておけば、私を拒むことなんてできないぞ。
 ほら、どんどん入っていく──初めてのわりには、美味しそうに呑み込むな」

 恥辱を煽るような言葉に、悠利の身体は火を噴いたように紅潮する。

 身体の内側に異物が侵入してくるおぞましさに、悠利は唇を噛みしめて耐えていたが、身体を緊張させるとかえって東山の指を感じてしまった。

 内奥深くに挿入された指が蠢きだすと、悠利は悲鳴も上げることができず、身じろぐことすらできなくなった。

 オイルの潤いを借りてグチュグチュと卑猥な音を立てながらゆっくりと抜き差しされると、不意に内部の粘膜に痺れるような快感が広がった。

 それはじわじわと全身に浸透し、屈辱に青白く強張っていた悠利の顔に、ふっと艶めいた恍惚の表情が浮かんだ。

「あっ…あ、ああっ……どうして──あ、あううう……」

「気持ちが良くなってきただろう? ほら、こっちも──」

 前方に腕を差し入れ、ふるふると雫を滴らせながら勃起した悠利の欲望をなぞり、東山は満足げな微笑を浮かべた。

 そして新たなオイルを人差し指と中指にからませ、今度は二本の指で悠利の蕾を穿った。

「やっ…身体が…変……あっ、熱い──ひっ、ひああっ……な、何か…動いてるっ!」

 じんじんと熱く疼きだした媚肉の中で、何百もの小さな虫がザワザワと蠢いているような感覚が沸き上がる。

 悦楽をもたらす神経が全て刺激されたような凄まじい快感に、悠利は狂ったように歔き叫びながら、下肢を振り乱した。

 自ら内部を擦りつけるように悠利が腰を揺らしはじめると、東山は双眸を細め、残酷な微笑を浮かべた。

 そのまま指を引き抜いてしまうと、今度は片手で悠利の若茎を刺激し、もう一方の手で堅くしこっている胸の果実を弄びはじめた。

「いやあっ……あっ…あうう……おねがい…もっと──」

「もっと? どうしてほしいんだ、悠利?
 ちゃんと言わないと、私には判らない」

 悠利が感じている切羽詰まった快感を察しながらも、東山は意地悪くそう告げた。

 顎を仰け反らせ、ひっきりなしに声を上げながら、悠利は絶望したように大きな目を見開いた。

「ああっ……いやだ…助けて──もう、ゆるして……」

「言えないなら、許さない──悠利、言いなさい、何をしてほしい?」

 東山の厳しい追求に答えられず、泣きながら首を振った悠利は、その瞬間、白濁した快感を解き放っていた。

 しかしすぐに大きな法悦の波に襲われ、悠利は欲望を高ぶらせたまま、陶酔したような表情を浮かべた。

「ヒッ、ひいいっ……いた、痛いっ!」

 繰り返し訪れる快楽に身を任せていた悠利は、不意にペニスの付け根を冷たい銀のリングで縛められてしまい、その苦痛に悲鳴を上げた。

 次の瞬間には刹那的な射精の快感に隠されていた、もっと淫らでとろけるような疼きが蘇り、悠利の全身を切なく痺れさせた。

「あ、ああ…んっ……もっと触って──奥まで、もっと擦って……」

 すでに理性は肉欲に溶かされ、自分が口走っている言葉さえ判らない。

 誘うように腰を揺らした悠利は、再び秘蕾に指が挿入されると、極まったような声を上げた。

「あううっ…そこ、いいっ……気持ちいい……あっ、ああっ……もっと…いれて──」

「良い子だ、悠利──そろそろご褒美をあげよう」

 バスローブを脱いだ東山は、ふっくらと綻び紅珊瑚の色合いにそまった蕾に猛った己自身をあてがい、ゆっくりと内部へと侵入させた。

「ヒイイッ! いやあっ、やめて…やめて──痛いっ!」

 限界を超えるような怒張を受け入れ、内奥をこじ開けられていく苦痛に、悠利の唇から甲高い悲鳴が迸った。

 太く、熱い灼熱が悠利の芯を蹂躙し、苦しいほどに抉る。

 洗練された物腰と、スマートな容姿には似合わぬほど、東山の欲望は凶暴で荒々しい。

 優雅で穏和な表の貌と、傲慢で残酷な裏の貌──その複雑な二面性に悠利は翻弄され、もたらされる快楽に狂喜した。